パレート法則とリボン・スキャニング
本日のお題:マイクロフィルムの電子化(スキャン)におけるいびつなコスト構造を理解しましょう。
パレート法則とは、おおまかに言って、
20%のコストをかけたものが80%の利益を生み、80%のコストをかけたものが20%の利益しか生まない
ということですね。(wikipedia:パレートの法則)
マイクロフィルムのスキャンに関しても、パレート法則が有効かもしれません。
マイクロフィルムをロール1本スキャナにかけると、ほとんど全部のコマをちゃんと検出していきます。感覚として、99%〜99.9%は成功するでしょう。かなり高い確率なのね、と思うかもしれません。
ところが、「99%〜99.9%成功」というのは、「0.1%〜1%の検出ミス」を意味します。1ロールに2400コマくらい撮影されているとすれば、少なくて2コマくらいの検出ミスで、多ければ20コマくらいですね。
ここで、リボン・スキャニング以前の状況を考えてみましょう。そして、「コマ検出ミスを見つけ出し、そのコマを特定して、マイクロフィルム上から見つけ出し、再スキャンする」スピードがものすごく早い人がいたとします。こんな超人が検査/再スキャンをしたとして、おそらく、5コマくらいを再スキャンかける時間があれば、もう一度、ロール1本まるごと再スキャンしちゃった方が早いでしょう。人件費などを考慮すると、2コマを再スキャンかけるくらいなら、もう一度、ロール1本まるごと再スキャンしちゃった方が費用が安く済むでしょう。*2つまり、0.1%の検出ミスだったとしても、スキャンし直してしまったほうが良い、ということです。
そんな状況だとして、「99%成功」≒「1%の検出ミス」≒「20コマの再スキャン」というものが、どれだけ、コストと時間がかかるものであるのか、想像できますよね。あまり、厳密に計算したこともありませんし、してみようとも思いませんが、パレート法則の「80:20」なんて話ではなく、「90:10」とか、「99:1」とかになるかもしれません。
このように、マイクロフィルムの電子化(スキャン)というのは、基本的に、大部分の時間を再スキャンに費やし、大部分のコストが再スキャンのときに発生するものなのです。
すると、当然のことながら、再スキャンを短縮・省略すれば、大きなコスト削減につながるわけです。これまでに何度か説明していますように、リボン・スキャニングというテクノロジーは、この再スキャンをあまり発生しないようにするためのものであり、マイクロフィルムの電子化において、コスト削減の期待の大型新人なわけです。
そして、前に「マイクロフィルムのスキャンに関しても、パレート法則が有効かもしれません」と言いましたが、ちょっと注意が必要です。パレート法則というのは、80/20を基本としていて、
20%のコストをかけたものが80%の利益を生み、80%のコストをかけたものが20%の利益しか生まない
というような意味だとすれば、リボン・スキャニングが登場して、やっとマイクロフィルムの電子化(スキャン)は、パレート法則が有効な圏内に入ったと言えます。つまり、リボン・スキャニング以前、再スキャンの工程のせいで、
全体の99%の画像を作成する[最初のスキャン]に全体の1%のコストが費やされ、たった1%の画像しか作成しない[再スキャン]に99%ものコストが費やされている
というかなりいびつなコスト構造になっていたと思います。それが、リボン・スキャニングにより、
20%のコストをかけた[最初のスキャン]が80%の画像を作成し、80%のコストをかけた[コマ検出枠の修正]が残りの20%の画像を作成する*3
という状況になりつつあります。
というわけで、マイクロフィルムの電子化における、パレート法則の有効性について、少しはご理解いただけたでしょうか?